※この記事は2016年11月29日に書かれたものを、サイト移転に伴い、再編集してこちらに公開しました。
つい数年前まで本番を楽しむことの意味がよく分かりませんでした。
本番での演奏、人前での演奏を楽しみたいけれど、楽しいなんて感じられませんでした。
音楽のことはもちろん大好きです。だからこそ辞められなかった。
いつか、第一線で活躍するスーパープレイヤーの方々のように演奏してみたい。あんな風に演奏出来たらどれだけ幸せだろう。
僕も芸高、芸大に入って(震えと付き合いながらも)何とか演奏を続けて、ある程度は認められてきた訳だから、きっといつか思うような演奏が出来るはず。
このような憧れのような、希望のような思いがいつの間にか…
・スーパープレイヤーの方々のように演奏出来るようにならないと本番を楽しむことなんて出来ない。
・ストイックに練習し続けていないと本番で出来るわけがない。
・震えが止まらないような辛い思いも、続けていけばいつか慣れて演奏出来るようになるはず。
・もうここまで来たんだから、他の道なんてありえない。
…と言った自分を不必要に追い詰めるような感情に変わっていきました。
上手くいかないと何故か自分を責めるようになっていきました。
はっきり言いますが、僕にとっては全くの事実ではありませんでした。
後程書きます。
とは言え、いつかやってやる、どうしても演奏していきたい、という思いを持ち続けてやってきました。
でも…どれだけ準備をしてきても、いろんな手を尽くしても、当時は本番の度に、「地獄の時間」を味わいました。
地獄の時間
…当時の僕は、楽器を吹き始めて最初の2分間くらいは楽器を落としそうになるくらいの震えが酷くあらわれて、ほぼパニック状態。
その時間は耐えるしかなくて、それからなんとか抗って無理矢理押さえつけて
…それを乗り越えると段々と落ち着きを取り戻して、やりたいことを何とか出来るようになってくる、という感じでした。
なので、ここをどうにか乗り切れば何とかなるという望みと共に、お客さんにも、一緒に演奏している他のプレイヤーの方々にも、どうにか見逃してくれ…無かったことに…というような思いで続けていました。
でも、段々と症状が酷くなってくると、どうにもならなくなって、全ての場面で…という感じになってきました。
人前で吹く度に、
本番で吹く度に、
そして段々とレッスンを受けていても、
レッスンをしていても、
音を出す度に
…震えさえなければ…
と、本当に苦しい、悔しい思いを何度も何度も繰り返してきました。
沢山の方々に迷惑と心配をかけてきました。
当時は足掻いてもどうしようも出来なかった。
震えのインパクトは相当大きく、なかなか抜け出すことも出来ない。
もちろん出来には波はありましたが、毎回のダメージは大きかった。
どんどん卑屈になって、精神的には相当おかしなことになっていたと思います。
症状の改善へ。その現実。
さて、苦しい文章はこのくらいにして…。
ちょっと自分ではどうすることも出来ないような症状や気持ちになった時、
今ではインターネットで情報を検索出来るようになったりして、だいぶハードルが下がったと思いますが、
まずはお医者さんや信頼できる専門家の方に相談することが大事だと思っています。
僕が本番を楽しめるようになったきっかけは、はっきり言って「症状の改善」です。
これは僕にとっての現実。
いろんな考え方が変わったり、向き合い方が変わったのも症状が少しずつでも改善した実感があったからだと思います。
諦めずに続けてきた結果とも言えるでしょう。
僕の場合はアレクサンダー・テクニークとの出会い、そしてお医者さんとの出会いです。
そこで、僕の震えは体質でもあり、症状名があるものだったということを知ります(本態性振戦)。
厳密に言うと、どうやら僕の震えのスタート時はあがり症や精神的なものでは無かったということでした。
この事実を知ってから、薬を使った治療も含めて始めた結果…あれよあれよと症状の改善に向かいました。
もちろんここから安定してくるまで1年くらいはかかりましたが、今までのことを考えれば、ありえない進歩です。
僕が今まで受けてきたオーボエや音楽のレッスンでは、僕にとって最も大事な、音楽をするための沢山のアドバイスや教えを頂きましたが、「震え」が改善に向かうようなアドバイスは残念ながらほとんどありませんでした。
精神論やメンタルトレーニングだったり、体の硬さを指摘されることだったり…
どれもその通りなんですが、これらのアドバイスが活かされるのは根本的なことが解決に向かってからでした。
(そりゃそうです。そんな症状があるなんて当時は誰も知らなかったですからね。)
それでも、今でもお世話になっている先生方は親身になって一緒に考えてくださりました。
変に追い込まれることなく、沢山の場を与えて頂き、経験させて頂きました。
サポートのある中でチャレンジを続けることが出来ました。
とても感謝しております。
チャレンジを継続して、楽器を演奏することを続けさせてくれた先生、先輩方、周りの方々の様々なサポートのおかげで今の僕があります。
今の自分で考えてみる。
では、先ほど書いた
「不必要に追い詰めるような感情」
に
「今」の僕の考えを足してみると…
・スーパープレイヤーの方々のように演奏出来るようにならないと本番を楽しむことなんて出来ない。
↓
今の僕も所謂スーパープレイヤーではないと思うし、今でも演奏に沢山の不十分な要素があるし、完璧に出来ないことももちろんあるけれど、本番ならではの演奏を思いっきり楽しむ、味わうことが出来るようになりました。
楽しめるからこそ、より質の高い演奏を披露出来るようになったと思います。
・ストイックに練習し続けていないと本番で出来るわけがない。
↓
昔に比べて、無闇にストイックな練習は圧倒的に減って、練習内容も自分に合ったものを試行錯誤してきた結果…楽器を吹く時間そのものは減ったかもしれませんが、本番で出来ることは圧倒的に増えました。
・震えが止まらないような辛い思いも、続けていけばいつか慣れて演奏出来るようになるはず。
↓
いろんな試行錯誤の結果良くなってきましたが、僕の場合、
辛い思いを続ける、続けていけばいつか慣れる、との思いで回数を重ねるほど、むしろ症状は悪化していきました。
「慣れ」だけでは出来ることは増えませんでした。
・もうここまで来たんだから、他の道なんてありえない。
↓
いくらでも他の道があります。
症状の改善が見られなかった時は、他の職業についても沢山検討しました。
他の道を認められるようになったら、むしろやりたいことがもっと明確になるのかもしれません。
そして僕は、音楽専門のアレクサンダー・テクニークの指導者の道も、演奏活動と共に本気で考えるようになった結果、不思議と演奏の仕事もレッスンの仕事も格段に増えてきました。
という感じです。
症状が少しずつ良くなりはじめて、そこから更に一つ一つ解決に向かうために考えてきた、試してきた結果です。
人生が変わる…?
改善のためのきっかけを作るのは
勇気を持って病院に行ったり
勇気を持ってアレクサンダー・テクニークのレッスンに行ったり
何か自分の勇気ある決断があった時にこそ、でした。
万が一、上手くいかない原因が、練習が足りないせいだったとしても、専門家の判断、アドバイスがあってからで遅くないです。
少なくともそういう勇気を持った決断があれば
「とりあえず練習」
とか
「場慣れ」
みたいな手段よりは役に立つ作戦や手段、どうにかする方法、考えるきっかけなんかを得られるはずです。
この方法は役に立たない、って分かることも前進だし、次を考えるきっかけになる。
貪欲に改善する方法をあらゆる手段から情報収集、選んでいけば、必ず改善する方向に向かうでしょう。
もしかしたら、人生が変わるくらい良くなってしまうかも知れない。
何でも質問お待ちしています。
とは言え、僕も今の状態にたどり着くまでに、数多くのお医者さんに通ったり、いろんな手段を試しました。
そこでやってきたことを少しずつ公開していきます。
いつでも質問はお待ちしております。
お返事も時間はかかるかもしれませんが、返します。
※ちなみに直接質問してくださった場合、秘密は絶対に守りますのでどうぞご遠慮なく。
楽器を問わずレッスンももちろん可能です。症状によっては病院等もご紹介します。
ひとまずお問い合わせまで。
僕の出来る限りですが、やれることはやります。
僕にはこれまでの数多くの「震える」経験と「震えなくなった」経験。
今でも続けている心と身体についての専門的な学び。
更に音楽家、プレイヤーとしての学びや経験。
がありますから、オーボエ奏者として「身体の使い方の悩み」や「震え」に対するアプローチが出来ると思っています。
僕はどうしても音楽を、オーボエを続けたかった。
だからこそ、このようなことを根気強く、見つけてこれたのかなと思います。
このシリーズは更新期間は長くなりそうですが、しばらく続けていきます。もちろんアレクサンダー・テクニークからのアプローチについても少しずつですが書いていきます。
そろそろ年末。
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