※この記事は2016年12月4日に書かれたものを、サイト移転に伴い、再編集してこちらに公開しました。
たまには活動報告を。2016年12月2日はこちらの本番でした。
Antoine Tamestit and Japanese Excellent Artists
アントワン・タメスティと日本の俊英たち
場所:
横浜みなとみらいホール
開演時間:
19:30
※19:00~19:15プレコンサート
出演者
鈴木 優人(指揮・オルガン)
アントワン・タメスティ(ヴィオラ)小林 沙羅(ソプラノ)
中川英二郎(トロンボーン)
横浜シンフォニエッタ (オーケストラ)
プログラム
19:00~19:15
プレコンサート
出演:アントワン・タメスティ、鈴木優人
プログラム:J.S.バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番ト短調 BWV 1029
19:30~21:00
本公演
J. S. バッハ/幻想曲ト長調 BWV 572「ピエス・ドルグ」
J. S. バッハ/クリスマス・オラトリオBWV 248より
W. A. モーツァルト/オペラ《フィガロの結婚》より 他
W. A. モーツァルト/交響曲第35番ニ長調K. 385「ハフナー」
A. シュニトケ/「音響と反響」(オルガンとトロンボーンのための)
A. シュニトケ/モノローグ(ヴィオラと弦楽のための)
横浜シンフォニエッタにお邪魔しました。首席での依頼。責任感も増します。
(2ndだって責任感はあるけれど、ちょっと種類が変わる気がしています。)
前日リハーサルはホールで!ありがたい!!
私の位置からの眺め。
こちらは「ハフナー」演奏中です。
(ここからの写真は公式から頂きました。)
指揮の鈴木優人さんは大学時代からお世話になっており、副科バロックオーボエ(曲が通るか通らないかのギリギリの演奏…)の試験でチェンバロを弾いて頂いたことも…!(今考えてもすごい経験です)
当日は、パイプオルガン(バッハ、シュニトケ)、チェンバロ、チェンバロ弾き振り、指揮、ともはや超人…いや、実は何人かいるのでは…?と思うくらいの大活躍。そのどれもが超一流。大尊敬している音楽家です。
音楽はとても生き生きとしており、沢山の「変化」そして「音を喋る」ことを特に求められました。
優人さんの「いい意味で真面目と思われたくない」という発言の通り、作品に潜む仕掛けや魅力を、思い切ってぐいぐいと引き出していく、時に過剰に露わにしていく指示。
オーケストラ全体でのコミュニケーションが盛んに行われていて、理想とする姿に向けて果敢にチャレンジしていく様子は、とても共感しましたし、優人さんと横浜シンフォニエッタならではの現場、音楽体験だなぁ、と思いました。
僕も取り組んでいてとても楽しく、クリエイティブな気持ちで、思い切ってチャレンジ出来ました。
そして今回のコンサートマスターは芸高の一つ上の先輩である白井圭さん。
こちらも今や国際的に活躍されている、素晴らしいヴァイオリニストですが、「久しぶりー」と、あの頃と変わらず、とても気さくにいろんなアドバイスをくださりました。
演奏はもちろんスーパーです。たくさん引っ張っていってもらいました。
その他のメンバーの方もとても素敵な方々、素晴らしい音楽家の方々ばかりで、とても温かい空気の中でのリハーサル、本番。
いやー…とっても幸せな時間でした。頑張りたい気持ち、もっとやりたい気持ちをどんどん掻き立てられました。
えっ…ソリスト…?
で、今回はこのような場面も
おおおお…。改めて見てもすごい写真…(涙)
バッハのクリスマスオラトリオのアリアでソプラノの小林沙羅さんだけではなくて、僕も前で…オーボエダモーレ(いつもよりちょっと長い)を演奏しました。
リハーサルで演奏しながら、内心「とんでもないことをやってるなぁ…!」と、慣れない環境にドギマギしながら、異常な興奮状態だったわけです。
緊張感も増しますが、演奏できる喜びもさらに湧いてきて…「なんだこれはー!うおおお!」という言葉に出来ない感覚。
ちなみに初日のリハのスタートの時点ではこういう並びのはずでした。↓
それが「やっぱりこっちで吹こうよ」ということになり…↓
(当日のゲネプロの様子)
古楽オーケストラならまだしも、現代のオーケストラではこのような抜粋でやることがない限り、前で立って演奏することはなかなか経験出来ないなぁ、と。
本当に貴重な経験をさせて頂きました。
オーボエダモーレがヴァイオリン、ヴィオラと絡み、通奏低音と絡み、さらに歌とデュエットし…。
まだちゃんと言葉に出来ないような、いろんな感情が押し寄せる中での本番でした。
本番時の心と身体
本番はこの後いったん退場して、舞台裏で急いで楽器をいつものオーボエに持ち替えて、リードを用意して、ステージに出て、いつもの席に座りチューニング…と、焦ってしょうがないような状況でしたが、比較的落ち着いて取り組むことが出来ました。
立ってダモーレを演奏しているときももちろんですが、シンフォニーを吹いていても、過去の自分、過去の習慣からの恐怖が沢山襲いかかってきます。
これは、僕の場合、練習やリハーサルの時からそうなんですが、震えることに対しての「恐怖心」から「震え」につながることや、少し演奏するのが難しい、怖いようなところで、以前やっていた…震えを無理矢理抑えていたような姿勢、構えをとってみたりすることがあります。
昔のように大事故が起こるわけでもないのに。長年の習慣に対する、とっさの防衛反応というか、これも習慣なんですよね。
20年近く震えと付き合ってきたので、しょうがないというか、理解出来るようになってきました。徐々に新しい習慣に塗り替えられている、アップデートし続けているとも言えます。
アレクサンダー・テクニークを勉強し始めてから、このような理解が進んでいきました。
恐怖を感じて上手くいかなくなってきたり、震えたり、腕がうまく動かないよう時は、必ずと言っていい程、頭と脊椎が接しているところから首も含めて、「縮んで」「固まって」います。
頭の「押し下げ」が起きています。
そこで、それに気付いたら、押し下げをやめてみる。動けるようにしてあげる。
やめられなかったら、どこで「固まり」をリセット出来るかを考えてみる。
そして
「そんなことをやらなくても今はもう大丈夫」
「まあ、もしこのままの状態でも演奏は続けられるから大丈夫だよ」
「今とこれまでの自分自身全部で音楽しよう」
「バッハ、モーツァルトをこう演奏したいんだ!」
…等と自分に伝えてみる。
そうすると、徐々に身体が動き始めて、演奏しやすい新たな姿勢に移行して、次のプレイに落ち着いてチャレンジ出来たりする。
もしくは、演奏する最初から頭、脊椎を意識する。
…と、ものすごく簡単に書きましたが、本当にこのくらいシンプルなプロセスを演奏中に試しながら取り組んでいます。
どんな時でも出来るわけではないですし、シンプルながら大変奥深い、アレクサンダー・テクニークで言われる1番の「キモ」の部分が頭脊椎の話なのも今では納得します。
(だからこそ最初は伝わりにくいのもよく分かります。こればかりは本とかインターネットの記事を読むことよりも、実際にレッスンや講座等で体験してみることをオススメします。)
これらの方法を使って、過去の習慣、癖を新しい習慣にアップデートしていく。これを毎回の演奏中に試みています。
実際、本番ではダモーレのリードがボーカルにしっかり差し込んでおいたはずが、段々と緩んでしまい(あるあるではありますが)、演奏しながら取れそうになっている状況と戦っていました。
「うわ。やべえ。取れたらどうしよう…ほとんど吹きっぱなしだから修正もできない…うー…ちゃんと差し込んでおいたのに…よりによって本番で…」
が襲いかかってきますが、上記のようなプロセスと
「楽器を自分に持ってきさえしていれば、緩んでも外れることはない」
という事実。
そして
「本番はいつもとは違うんだから。特別な時間を味わおう」
「バッハの書いた音楽をこう表現しよう」
を思い出して、思い切って演奏に取り組みました。ちゃんと乗り切れました。
リハーサルで何度かシュミレーションしておいたのも良かったと思います。
ありがたいサポートと感想。次に向けて。
何より心強かったり、安心して演奏にチャレンジ出来たのは、メンバーの方々の素晴らしい演奏、サポート、会話や暖かい言葉、スタッフの方々のとても丁寧で親切な気遣いのおかげです。
練習が始まる前だったり「おはようございます」「おつかれさまでした」の挨拶を交わしている時だったりに声をかけてくださったり、ジェスチャーだったりで褒めてくださったり、アドバイスを頂いたり、冗談を言い合ったりする。
スタッフの方々もとにかく丁寧で安心して演奏に集中させてくれる環境が整っている。
これは本当にありがたいなぁ、と。一つ一つを受け入れて、感謝しておりました。
特に某先輩からの
「堂々としていて良いね。素晴らしいよ。」
は、人生で初めて言われた言葉だったので、(例えどんなにお世辞だったとしても)こんなことを言われるようになったんだなぁ、と、感慨深いものがありました。
潜在的な努力がようやく結びついて来ているんだなぁ、と思います。
もちろん沢山の反省もあります。
もっと大きな表現が出来るようになりたいですし、自分の色を更に出せるようになりたい。
こういった反省はその日の全ての演奏が終わってからやることにしています。
次はこうやろう、こうしてみよう、もっとこうしてやろうが沢山あります。
その為にも、もっとこんな経験がしたい!たくさんの音楽体験を積み重ねたい!
やりたいことのためにこれからも努力、探求を続けていきたいと思いました。
ソリストの皆さんの演奏はどれも心に残るすごい演奏ばかりでしたが、特に印象に残ったタメスティさんのヴィオラと優人さんのチェンバロで演奏されたバッハ。
大好きな曲というのもあるのですが、この二人のやり取りがとんでもないクオリティで、こんなに自由で、何故成立するのか…
所謂ロマンティックにはならないのだけど、バッハの世界の中で、やりたいことを最大限やっている。曲の魅力が何倍にもなって表現されていく様子に浸ることが出来て、とっても幸せな気分でした。
こんな世界があるんだなぁ…僕もそんな世界に行ってみたい。いつかやってみたいと思います。
以上が今回の演奏会で経験したことでした。
こうして言語化することで、より鮮明に思い返すことになって、良かったです。
お世話になった全ての皆様、応援してくださった全ての皆様に感謝申し上げます。また次に向けて頑張ってまいります!
ソプラノの小林沙羅さんは実は大学の同級生でした!同級生でデュエットさせて頂けてとっても幸せでした。
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